幹細胞・再生医療研究ガイド

疾患モデル研究
その4:iPS細胞を利用した疾患モデリングの課題と解決策②
- 分化誘導実験の再現性向上 -
「疾患モデリングの課題と解決策」として、iPS細胞を安定維持するための培養方法の問題点を挙げ、これを解決する培養システムの一例として、Cellartis DEF-CS Culture System (DEF-CS培養システム)をご紹介しました。「iPS細胞を利用した疾患モデリングの課題と解決策」のその2となる本ページでは、“分化誘導実験の再現性向上”に焦点を当て、その課題と解決策についてご紹介いたします。

分化誘導実験の課題

ヒトiPS細胞(hiPSC)は多分化能を有し、適切な分化誘導環境下で様々な体細胞へと分化することが可能です。一方で、hiPSCの分化誘導実験を再現性良く高効率に行うためには、様々な課題を克服することが必要です。

1.分化誘導実験の課題とDEF-CS培養システムに最適化されたRobustな肝分化誘導システム

<課題1>分化誘導実験の出発材料となるhiPSCの品質の安定性確保

hiPSCの維持培養では、培養の手技や用いるhiPSC株の違いの影響を受け、培養実験間だけではなく、同一培養液中の細胞間においても未分化性などの品質にバラツキが生じやすく、これらが分化誘導結果の再現性低下や分化誘導効率の低下に繋がることが危惧されます。

<解決法1>

このようなhiPSCの培養に起因する問題点の解消は下記の3項目が有効です。
①実験間や実験者間の手技のバラツキの低減
②同一培養液中の細胞間の品質のバラツキの低減
③異なるhiPSC株毎の培養条件の最適化を最小限に抑えられる培養システムの選択

DEF-CS培養システムでは、「フィーダーフリー」と「シングルセル継代」による培養手技の簡便化や「単層培養」による細胞品質の均一性の確保を実現しており、hiPSC株への依存が少ない培養が可能です(表1、図1)。 横にスクロールできます
表1.DEF-CS培養法と従来の培養法(オンフィーダー培養)の違い
特徴DEF-CS培養法従来の培養法(オンフィーダー)
細胞形態DEF-CS培養法
細胞密度に偏りの少ないシート状
従来の培養法(オンフィーダー)
細胞密度に偏りの大きいコロニー状
同一培養面にある
細胞個々の培養環境
培養面の位置によらずほぼ一定培養面の位置に依存して変化
(コロニー中心:密/外側:疎)
同一培養面にある
細胞個々の品質
均一性の確保が容易均一性の確保に難あり

横にスクロールできます
異なるhiPSC株の倍化時間の比較


<課題2>Robustな分化誘導法の確立

実験間やhiPSC株に依存しない安定した分化誘導結果を得るためには、課題1に挙げた出発材料となるhiPSC株の品質を安定に維持するだけでなく、分化誘導に用いるプロトコールそのものにも頑強性(Robustness)が必要です。

<解決法2>

目的の分化細胞毎に分化誘導プロトコールの最適化が必要であり、幾つかの分化細胞については市販の分化誘導システムの利用も可能です。
Cellartis iPS Cell to Hepatocyte Differentiation System(製品コード Y30055)による肝分化(図2)では、25種類のhiPSC / hESCからの肝細胞調製が可能であることを確認しています(図3)。また、hiPSC株毎の性能の違いに起因する問題点を軽減するには、目的細胞種への分化能を確認した株を選択することも重要です。(販売中の各iPS細胞株の情報)

横にスクロールできます
販売中の各iPS細胞株の情報
横にスクロールできます
肝細胞分化誘導結果


2.ヒトiPS細胞由来の分化細胞作製サービスのご提供
タカラバイオでは、細胞・培地関連のカスタムソリューション提案の一環として、ヒトiPS細胞由来肝細胞、心筋細胞、血管内皮細胞、膵β細胞、ミクログリアなどの分化細胞作製サービスをご提供しています。
詳細はこちらをご覧ください。

<サービス内容の例>
  • お手持ちの多能性幹細胞や弊社サービスにより樹立した多能性細胞から誘導した分化細胞を作製
  • 弊社プロトコールによる分化誘導(膵β、肝、心筋、血管内皮細胞、ミクログリアへの分化誘導)の他、ご指定のプロトコールに従って分化細胞を作製
  • 分化細胞(凍結細胞)での納品の他、細胞ライセートや分化途中段階の細胞を凍結サンプルとして納品も対応
分化誘導フロー

>>次のページへ

詳細はこちら
細胞・培地のカスタム製造
  • 多能性幹細胞(iPS/ES細胞)の樹立と細胞加工
  • ヒトiPS細胞由来分化細胞の作製
  • カスタム培地の製造