2023年5月11日掲載
タカラバイオ株式会社は、2025年度(2026年3月期)を最終年度とする3年間の「中期経営計画2025」(以下、新中計)を策定しました。新中計は2020年度に策定した「長期経営構想2025」(2020~2025年度、末尾<参考>を参照)の後半3年間の具体的な実行計画を定めたものです。新中計では、『「長期経営構想2025」の定量目標を前倒して達成し、飛躍的な成長を遂げる』 ことを全体方針とし、最終年度の定量目標を営業利益 150億円、ROE 8%としました。
中期経営計画2022(2020~2022年度、前中計)は、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックの期間と重複し、この間、当社グループは自社技術を活用した新型コロナウイルス検査関連試薬の開発・製造やワクチン関連のCDMO受託を積極的に展開しました。その結果、前中計は、定量目標を大きく上回り、当社グループは、さらなる成長へ向けて積極的に、研究開発投資や設備投資、人材投資を先行的に進めてきました。
新中計では、コロナ・クリフ(アフター・コロナの業績の崖)を乗り越えて飛躍的な成長を遂げるために、事業構造の変革を進め、試薬・機器事業の持続的な成長と、CDMO事業の飛躍的な成長によりバイオ創薬基盤技術の開発を進め、ライフサイエンス産業のインフラを担うグローバル・プラットフォーマーを目指す事業戦略を展開します。また、「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて、人々の健康に貢献します」という企業理念の実践を通じて、新たな価値を創造し、持続可能な社会の実現へ向けた貢献を果たしていきます。
事業戦略
- ライフサイエンス産業のインフラを担うグローバル・プラットフォーマーとしての地位の確立
- グローカルな製造・マーケティング体制の整備
- 品質管理工程の堅牢化・効率化と製造技術力の強化
- 創薬基盤技術の価値最大化
- 研究開発プロジェクトの選択と集中による新製品/サービスの開発スピードの加速
経営基盤強化戦略
- 成長・強化領域への積極的な投資と適切な株主還元によるROEの向上(財務)
- 会社と従業員のつながりを深め、強固な成長基盤の構築(人・組織)
- 持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長の両立(社会的価値)
(1)試薬事業
コロナ禍では、新型コロナウイルス検査関連試薬が大幅に伸長しましたが、新中計ではこれらの売上を前提とせず、一般研究用試薬のグローバルで多極的(グローカル)展開による試薬事業の成長を目指します。
- BtoBカスタム製品の売上拡大など、地域特性に応じたグローカルなマーケティング/販売戦略を構築し、年率7%成長(現地通貨ベース)を目指す。
- アプリケーション分野や臨床応用分野における新製品の開発を強化する。
- 日・米・中における研究開発体制の最適化とシナジー効果を創出する。
- 効率性の向上とリスク低減のバランスを踏まえ、グローカル(グロ―バルで多極的)な製造体制を構築する
(2)機器事業
多様な検査に対応したPCR関連装置やシングルセル解析装置の新機種の開発を加速するほか、専用試薬の開発によるシステム化を図ります。
- シングルセル解析装置(ICELL8)の新機種開発の加速
- 検査市場向けqPCR装置の新機種開発とパネル試薬の開発によるシステム化
- ヒト感染症検査用のqPCR医療機器と専用試薬の開発
- オンサイト検査用シングルユースデバイスの開発
- 等温遺伝子増幅システムの開発
(3)CDMO事業
飛躍的成長を図るために積極的な技術開発・人材育成・設備投資を進めます。
①再生医療等製品関連受託
- 多様なモダリティや大量製造用受託メニューの充実
- 製造・品質管理工程の堅牢化、自動化によるコストダウン
- 遺伝子・細胞プロセッシングセンター3号棟(2024年度着工、2027年度竣工予定)の建設準備
②遺伝子解析/検査関連受託
- リキッドバイオプシー技術を活用した解析/検査前処理技術の開発
- 臨床応用向けNGS関連サービスの開発
- 先端的マルチオミックス解析による創薬支援サービスの開発
(4)遺伝子医療事業
NY-ESO-1 siTCR®遺伝子治療薬(TBI-1301)の上市を目指し、さらに、再生・細胞医療・遺伝子治療に関する独自の創薬基盤技術の高付加価値化を図ります。
- NY-ESO-1 siTCR~{®}遺伝子治療薬(TBI-1301)の上市
- CD19・JAK/STAT・CAR(TBI-2001)の従来型CAR-Tに対する優位性データの取得
- CereAAV~{TM}の従来型AAVに対する優位性データの取得
- RetroNectin~{®}の製造能力の増強
- mRNA合成用酵素等(Ancillary Materials:医薬品等製造原料)の開発・製品化
(1)財務
財務健全性を維持しつつ成長・強化領域への投資を積極的に継続実施します。また、適切な株主還元を維持することでROEを向上し、資本コストや市場評価を意識した経営を推進します。
①研究開発・設備投資・株主還元について
- 健全な財務基盤、手元資金(2022年度末自己資本比率86.9%、現預金518億円)および、3か年累計の営業CF620億円(研究開発費控除前)を積極的に活用する
- 持続的成長と飛躍的成長の原動力となる研究開発費を、3年間で270億円の投資を行い、日・米・中の各拠点の開発テーマの最適化と連携強化を進める
- 遺伝子・細胞プロセッシングセンター3号棟を含め、約460億円の設備投資を計画
- 株主還元は3か年累計で100億円を計画
②資本コストや市場評価について
- 「中期経営計画2022」では、営業利益が大幅に増加したためにROEは大きく伸長した。このためROEは株主資本コストを大きく上回った
- 「中期経営計画2025」では、2023年度の減益により、ROEは低下し、株主資本コストを下回ると予想される。しかしながら2024年度以降は、再びROEは株主資本コストを上回る計画
- 直近は株価の低下およびBPS(1株あたり純資産)が増加し、PBR(株価純資産倍率)は低下傾向にあるが、目安となる1倍を超えた状態を維持している
(2)人・組織
会社と従業員とのつながりを強化するとともに、飛躍的成長を目指す基盤としての労働環境づくりや人事施策を実施します。
人づくり:採用から育成にシフトし、変化に対応できる人材を育成する。
組織づくり:困難に柔軟に適応できる組織づくりを実現する。
労働環境づくり:多様な人材が能力発揮できる就業環境を整備する。
(3)社会的価値の創造(サステナビリティ活動)
事業活動を通じて様々な社会的課題に取り組み、「持続可能な社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立を目指すサステナビリティ活動を推進します。
マテリアリティ・マトリクス
重点テーマ
- CO2排出削減の推進:事業活動の拡大、設備増大等によりCO2排出量の増加が予想される中、再生可能エネルギーの利用や省エネ活動などにより、売上高あたりのCO2排出量(原単位)を2018年度(基準年)から50%削減する
- TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示レベルの強化
- 人権デューデリジェンスの推進:タカラバイオグループ内およびバリューチェーン上の人権リスクの特定・評価を通じ、人権リスクの低減を図る
※サステナビリティ活動の詳細は当社ホームページをご参照ください
<参考>
タカラバイオグループ「長期経営構想2025」の概要(2020年策定)
(1)位置づけ・目的
「遺伝子治療などの革新的なバイオ技術の開発を通じて、人々の健康に貢献します。」という企業理念のもと、2025年における目指す姿を示し、持続的成長を実現する。
(2)期間
2020年度~2025年度(6年間)
(3)ビジョン(目指す姿)
「研究用試薬・理化学機器事業」と「CDMO事業」を通じ、バイオ創薬基盤技術開発を進め、新モダリティを創出し続ける創薬企業を目指す。
(4)計画最終年度定量目標
営業利益:100億円、ROE:8%以上