プライマーの使用法について -インターカレーター法(TB Green検出系)によるリアルタイムRT-PCR -

■プライマーの種類と使用用途

Perfect Real Timeサポートシステムでは、下記2種類のプライマーから選択できます。
  • R:逆転写反応にRandom Primerを用いる実験に使用できる。
  • dT:逆転写反応にOligo dT Primerを用いる実験に使用できる。
    遺伝子の3´末端から1,500塩基以内の領域に設計。
RdTは検索結果のpositionの欄でご確認いただけます。

■逆転写反応用プライマーの選択

逆転写反応には、Random 6 mers、Oligo dT Primer、遺伝子特異的プライマーの3種類が使用できます。
Random 6 mersとOligo dT Primerの両方を用いるとmRNA全長にわたり効率よくcDNAが合成されます。

Random 6 mers

一般的な遺伝子発現解析には、Random 6 mersを使用してください。Random 6 mersを使用すると、PCR用プライマー位置によらず効率の良い逆転写反応を行うことができます。

Oligo dT Primer

polyAからの逆転写を行いたい場合には、Oligo dT Primerを使用します。 その際、PCR用プライマー位置がpolyAから離れすぎていると、効率よく逆転写反応をすることができません。Oligo dT Primerを単独で使用する場合は、できるだけpolyAから1.5 kb以内に設計されたPCR用プライマーと組み合わせて使用してください。

遺伝子特異的プライマー

特定の遺伝子のみを検出する場合には、遺伝子特異的プライマーを逆転写反応に使用できます。この場合、PCR用のReverse Primerを逆転写用プライマーとして使用します。

※ pri-miRNAの様な短鎖RNAの場合には、NucleoSpin miRNA(製品コード 740971.10/50/250)などのsmall RNA精製用試薬 またはRNAiso Plus(製品コード 9108)などのAGPC試薬によりRNA精製を行い、逆転写反応にはRandom 6 mersをお使いください。 total RNAやpolyA RNA精製用のスピンカラムタイプのRNA精製試薬はsmall RNA画分がフロースルーに排出されてしまうため、miRNA精製に使用できません。

※ lincRNAの逆転写反応にはOligo dT Primerが使用できます。 その他polyAを持たないnon-coding RNAの逆転写反応にはRandom 6 mersをご使用ください。


■使用方法


(1)用意するもの(主なもの)

  • PrimeScript RT reagent Kit (Perfect Real Time) (製品コード RR037A):逆転写反応用
  • TB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus) (製品コード RR820S/A/B)、またはTB Green Premix Ex Taq (Tli RNaseH Plus) (製品コード RR420S/A/B):リアルタイムPCR用*1
  • リアルタイムPCR用プライマー*2
  • 鋳型(total RNA)
  • リアルタイムPCR装置と専用チューブ・プレート
*1 基本的に、反応特異性と増幅効率のバランスが良いRR820S/A/Bの使用を推奨します。Smart Cycler Systemをご使用の場合にはRR420S/A/Bを用いてください。
*2 Forward primer, Reverse primer各10 pmol/μlのプライマー溶液を調製して使用します。

(2)プロトコール

逆転写反応
  1. 下記に示す逆転写反応液を氷上で調製する。
    RNAサンプル以外のコンポーネントを必要本数+α調製し、マイクロチューブに分注後、RNAサンプルを添加する。

    <1反応あたり>  横にスクロールできます
    試薬 使用量 最終濃度
    (または添加量)
    5×PrimeScript Buffer (for Real Time) 2 μl
    PrimeScript RT Enzyme Mix I 0.5 μl
    Oligo dT Primer (50 μM) *1 0.5 μl 25 pmol
    Random 6 mers (100 μM) *1 0.5 μl 50 pmol
    total RNA
    RNase Free dH2O
    Total 10 μl*2

    *1 Oligo dT PrimerとRandom 6 mersの両方を用いるとmRNA全長にわたり効率よくcDNAが合成されます。
    なお、各プライマーを単独で用いる場合およびGene Specific Primerの場合の使用量は以下の通りです。


    プライマー 使用量  添加量
    Oligo dT Primer(50 μM) 0.5 μl   25 pmol
    Random 6 mers(100 μM) 0.5 μl 50 pmol
    Gene Specific Primer(2 μM) 0.5 μl 1 pmol

    *2 逆転写反応は、必要に応じてスケールアップすることも可能です。10 μlの反応液で逆転写できるのは、およそ500 ngまでのtotal RNAです。


  2. 逆転写反応を行う。
    37℃、15分*3 (逆転写反応)
    85℃、5秒 (逆転写酵素を熱失活させる)
    4℃

    *3 Gene Specific Primerを用いる場合:逆転写反応を42℃、15分で行ってください。
    PCRで非特異的な増幅が生じた場合には、逆転写温度を50℃に変更すると改善される場合があります。


    注: 2.で得た逆転写反応液をリアルタイムPCRの系に持ち込む場合には、PCR反応液容量の10%までとしてください。

※ 増幅領域にexon-junction(イントロン)を含む場合、イントロンサイズが比較的長ければ、調製したRNAサンプルにゲノムDNAが混入していたとしてもゲノムDNA由来の増幅は起こらないか、融解曲線分析によりcDNA由来の増幅産物と区別できる可能性が高くなります。
しかし、イントロンを含まない場合やイントロンサイズが300 bp以下の場合は、鋳型となるtotal RNAの抽出後、DNaseI処理により混入ゲノムDNAを除去することを推奨します。 ゲノムDNA除去反応をプラスしたRT-qPCR専用の逆転写キットPrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)(製品コード RR047A/B)のご利用が便利です。
マニュアルでのゲノムDNA除去操作については、PrimeScript RT reagent Kit説明書をご確認ください。




リアルタイムPCR

TB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus)(製品コード RR820A)と Thermal Cycler Dice Real Time System II (製品コード TP900:終売)を用いる場合を例として示す。

<TB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus)とThermal Cycler Dice Real Time System II を用いる場合>

  1. 下記に示すPCR反応液を調製する。
    鋳型以外のコンポーネントを必要本数+α調製し、リアルタイムPCR専用プレートやチューブに分注後、鋳型を添加する。

     <1反応あたり> 横にスクロールできます
    試薬 使用量 最終濃度
    (または添加量)
    TB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus) (2×) 12.5 μl
    PCR Forward Primer (10 μM) 1.0 μl 0.4 μM
    PCR Reverse Primer (10 μM) 1.0 μl 0.4 μM
    template (cDNA溶液) 2.0 μl
    滅菌精製水 8.5 μl  
    Total 25 μl  

    total RNA 10 pg~100 ng相当量のcDNAをtemplateとして使用します。 また、逆転写反応液の持込みは、PCR反応液容量の10%以下になるようにしてください。


  2. 反応を開始する。
    PCR反応条件 【シャトルPCR標準プロトコール】
    (初期変性)
      95℃、30秒
    (PCR反応:40サイクル)
      95℃、5秒
      60℃、30秒
    (融解曲線分析)



条件の詳細および他のリアルタイムPCR装置を用いる場合の条件についてはTB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus) 、 またはTB Green Premix Ex Taq (Tli RNaseH Plus) をご参照ください。