タカラバイオ株式会社は、膵がんを対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10(開発コード:TBI-1401)によるがん治療の第I相臨床試験を日本国内で実施するため、5月31日付で医薬品医療機器総合機構(PMDA)に再生医療等製品としての治験計画届を提出しましたのでお知らせいたします。
 
 本試験では、切除不能進行膵がんを対象とし、HF10と既存の化学療法剤を併用した際の安全性などの評価を行います。今後、PMDAによる治験計画届の受理後、試験実施施設の治験審査委員会による審査を経て、被験者登録・投与を開始いたします。また、本試験では、当社遺伝子・細胞プロセッシングセンターにて製造したHF10製剤(治験製品)を使用します。
 
 当社は、日本及び米国にて悪性黒色腫を対象としたHF10の臨床開発を実施しており、これまで腫瘍縮小効果や安全性において良好な結果を得ております。また、膵がんを対象にした医師主導臨床研究が実施され、良好な結果が報告されております。(注)

【本試験の概要】

治験課題名

治癒切除不能な膵癌患者を対象としたTBI-1401(HF10)の化学療法併用第I相試験

対象患者

治癒切除不能な膵癌患者(Stage III又はIV)

試験製品・併用薬

治験製品TBI-1401(HF10)を超音波内視鏡で腫瘍内投与し、
ゲムシタビン及びナブパクリタキセルを併用投与する。

主要評価項目

用量制限毒性(DLT)

目標症例数

6例(最大12例)

試験期間(予定)

平成29年7月~平成31年1月

実施施設(予定)

2施設(国立がん研究センター東病院、神奈川県立がんセンター)

腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内の開発及び販売に関しては、大塚製薬株式会社と独占的ライセンス契約を締結しており、両社で協議を重ね、国内におけるHF10の早期承認を目指してまいります。

 
(注)平成28年4月26日当社リリース
「膵癌を対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10の臨床研究結果を日本消化器内視鏡学会で発表」
https://www.takara-bio.co.jp/ja/news/news_Release-8967890363266172884.html

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。
 

HF10
HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の自然変異弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。また、平成28年12月に大塚製薬株式会社とHF10に関する国内独占的ライセンス契約を締結しました。
 

単純ヘルペスウイルス1型
単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が治療薬として有効です。
 

ゲムシタビン
癌細胞は、遺伝子であるDNAを合成しながら活発な細胞分裂を繰り返し、無限に増殖する性質があります。ゲムシタビンは、癌細胞のDNAに入り込み、細胞分裂に必要なDNAの合成を阻害して癌細胞を消滅させ、癌細胞の分裂や増殖を抑える働きのある薬剤です。
 

ナブパクリタキセル
パクリタキセルは、細胞分裂に必要な微小管という細胞成分の働きを阻害し、細胞分裂を抑えることにより癌細胞の増殖を抑える働きがあります。ナブパクリタキセルは、パクリタキセルという抗癌剤にアルブミンというタンパク質を結合させた薬剤です。