当社との共同研究の成果として、大阪大学大学院医学系研究科医学専攻 ゲノム生物学講座がんゲノム情報学の 谷内田 真一教授らの研究グループの論文が、3月20日に米国科学誌「The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery」に掲載されました。

英文タイトル

Characterizing the Tumor Immune Environment in Thymic Epithelial Tumors Using T-cell Receptor Repertoire Analysis and Gene Expression Profiling

タイトル和訳

T細胞受容体レパトア解析と遺伝子発現プロファイリングを用いた胸腺上皮性腫瘍における腫瘍免疫環境の調査

著者名

Hiroto Ishida, So Takata, Koichiro Aya, Yoichiro Nakatani, Masafumi Horie, Daichi Maeda, Soichiro Funaki, Yasushi Shintani, Shinichi Yachida

掲載誌

The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery

概要

胸腺腫は、T細胞の分化や成熟に重要な胸腺上皮細胞に由来する腫瘍である。胸腺腫内では、正常胸腺と同様に、T細胞の分化と成熟の機能は維持されるため、腫瘍内では多様な腫瘍免疫環境(Tumor immune environment, TIE)が見られることが知られている。本研究では、上皮細胞の形態およびT細胞比率に基づいた5つのWHO分類(A, AB, B1, B2, B3)の合計97症例群から、RNAを用いたT細胞レパトア解析とRNA-Seqを行い、それぞれの分類群でT細胞のクローナリティ、各免疫細胞の組成、およびT細胞炎症シグネチャーを比較することで、包括的な免疫ゲノムプロファイリングによるTIEの本態解明を目指した。

その結果、高リスク群のB3型胸腺腫では、他の分類群と比べて、T細胞のクローナリティが高く、その程度が予後と関係していることがT細胞レパトア解析から明らかとなった。さらにRNA-Seqからの発現変動遺伝子の解析より、B3型胸腺腫のT細胞炎症性の一部症例群ではT細胞の活性化を抑制する免疫チェックポイント分子であるCTLA4の発現が上昇しており、同症例群が免疫チェックポイント阻害剤の効果を評価するための新しい試験対象になる可能性が示唆された。