タカラバイオ株式会社の推進する遺伝子治療の中核技術の1つである「siTCRベクター技術」に関する特許について、米国特許商標庁により特許査定を受けましたのでお知らせします。
 

siTCRベクター技術は、内在性のTCRの発現をRNA干渉により抑制し、目的とするTCRを発現するTリンパ球がより多く得られる技術で、TCR遺伝子治療の副作用のリスクの低減、有効性の向上につながると考えています。本特許は、siTCRベクター技術の基本特許であり、三重大学との共同出願です。
 

当社は、siTCRベクター技術を利用した遺伝子治療であるsiTCR遺伝子治療の臨床開発を、平成33年度の商業化を目標に、引き続き推進してまいります。

 
【今回成立した特許について】

 

特許名 Method for Expression of Specific Gene
登録番号 US9051391
特許登録日/満了日 2015年6月9日/2028年12月30日
他国での成立状況 日本、韓国、中国

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

siTCR遺伝子治療

がん患者から採取したT細胞に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外で導入し、培養によって増殖させた後に輸注により患者に戻す治療をTCR遺伝子治療といい、Engineered T cell Therapyの一種です。TCR遺伝子が導入されたT細胞が、患者の体内において、がん細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることによりがんを治療します。siTCRベクター技術を用いたTCR遺伝子治療をsiTCR遺伝子治療と呼んでいます。ターゲットとするがん抗原に合わせたTCR遺伝子を選択することにより、siTCR遺伝子治療は様々ながん種への適用が可能となります。
現在、三重大学等において、固形がんを対象としたMAGE-A4・siTCR遺伝子治療およびNY-ESO-1・siTCR遺伝子治療の第I相臨床試験(医師主導治験)が行われています。

 

TCR(T細胞受容体)

リンパ球(T細胞)に発現する糖タンパク質で、リンパ球が抗原を認識する際に作用します。腫瘍抗原を含む抗原をTCRが認識することにより、リンパ球が活性化されます。

 

RNA干渉

二本鎖RNAによって配列特異的にメッセンジャーRNAが分解され、遺伝子の発現が抑制される現象のことを言います。この現象を利用して、細胞内で人工的に二本鎖RNAを発現させることにより、目的遺伝子の発現を抑制することができます。