タカラバイオ株式会社は、腫瘍溶解性ウイルスHF10(開発コード:TBI-1401(HF10))によるがん治療の第Ⅰ相臨床試験を日本国内で実施するため、本日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に再生医療等製品としての治験計画届を提出しましたのでお知らせいたします。

 

本試験では、悪性黒色腫や皮膚の扁平上皮癌などの固形がんを対象とし、HF10を反復投与した際の安全性などの評価を行います。今後、PMDAによる治験計画届の受理後、試験実施施設の治験審査委員会による審査を経て、被験者登録・投与を開始いたします。

 

当社は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(改正薬事法)において再生医療等製品に適用される制度(条件及び期限付承認制度)などを活用してHF10の早期承認を目指し、日本国内で平成30年度に商業化することを目標といたします。なお、米国においてHF10の悪性黒色腫を対象とした第Ⅱ相臨床試験を実施中ですが、米国においても平成30年度に商業化することを目標にしております。

 

本件による当社連結及び単体の平成27年3月期業績への直接的な影響は軽微です。

 

本試験の概要

 

治験課題名 表在性病変を有する固形がん患者を対象としたTBI-1401(HF10)の第Ⅰ相腫瘍内反復投与試験
対象患者 表在性病変を有する固形がん患者(悪性黒色腫、皮膚の扁平上皮癌等)
主要評価項目 安全性
副次評価項目 腫瘍縮小効果、抗HSV-1抗体
探索的評価項目 免疫応答
目標症例数 6例
試験期間 平成27年4月~平成28年3月(予定)
実施施設 国立がん研究センター中央病院(皮膚腫瘍科・山﨑直也 科長)

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

 

HF10

当社は、平成22年11月にHF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得しました。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が治療薬として有効です。

 

扁平上皮癌

皮膚、肺、食道など様々な臓器の表面で生じる悪性腫瘍です。このうち皮膚の扁平上皮癌は、皮膚の表皮に存在する表皮角化細胞(ケラチノサイト)が悪性増殖してできる癌です。

 

悪性黒色腫

悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、メラノーマとも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。