タカラバイオ株式会社は、米国で実施中の腫瘍溶解性ウイルスHF10の第Ⅱ相臨床試験に関する主要な結果を、本年11月に開催される第13回国際メラノーマ研究会議年次総会および第31回国際癌免疫学会年次総会において発表する予定です。
 

【発表日時】

 

●13回国際メラノーマ研究会議年次総会
(13th International Congress of the Society for Melanoma Research)
日時:2016年11月7日 午後6時~8時(現地時間)
場所:Boston Marriott Copley Place, MA, US
 
●第31回国際癌免疫学会年次総会
(31st Annual Meeting & Associated Programs Society for Immunotherapy of Cancer)
日時:2016年11月10日(現地時間)
場所:Gaylord National Hotel & Convention Center, MD, US
 

【第13回国際メラノーマ研究会議年次総会の要旨】

 

対象 切除不能または転移性メラノーマ患者
投与;46例(有効性評価可能症例;43例)
ステージIIIB(20%), IIIC(43%), IV(37%)
評価項目 有効性(腫瘍縮小効果、無増悪生存期間、1年生存率 等)、安全性、免疫学的検査
投与 併用投与;
HF10腫瘍内投与(1×10sup{7}TCIDsub{50}/mL、計6回、継続可能な症例は最大19回)+イピリムマブ静脈内投与(3mg/kg、3週毎に計4回)
試験結果 ●因果関係を否定できない有害事象の大半がグレード2以下、グレード3が3例、グレード4が3例。
●用量制限毒性は観察されず
●投与症例(46例)のうち、24週経過時点での奏効率は41.8%(完全奏効(11.6%)、部分奏効(30.2%))、安定(25.6%)
●同上24週以降も含めた奏効率は48.8%(完全奏効(18.6%)、部分奏効(30.2%))、安定(18.6%)
 
HF10は、イピリムマブとの併用により、同剤の毒性を増強することはなく、安全性の高い治療法である。また、局所投与でありながら、投与部位のみならず全身的な効果についても期待できる治療法である。

 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

腫瘍溶解性ウイルスHF10

HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic Virus)と呼ばれています。腫瘍溶解性ウイルスは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルスです。増殖によって直接的にがん細胞を破壊します。腫瘍溶解性ウイルスは国内では、2014年11月に施行された医薬品医療機器等法であらたに定義された再生医療等製品に該当し、「条件及び期限付き承認制度」による早期の商業化のための制度が準備されています。
 

悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性度が非常に高い皮膚に発生するがんの一種で、メラノーマとも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。
 

イピリムマブ

抗体医薬品の一種で、免疫系を活性化することで抗がん作用を活性化します。メラノーマの治療薬として使用されています。
 

TCID50

培養した細胞の50%を感染させることができるウイルス量を表す単位です。
50% Tissue Culture Infectious Doseを略してTCID50と呼びます。
 

副作用のグレード

副作用の重症度を示すものです。米国がん国立研究所が公表した基準では、グレード1~5の5段階に分類されています。
グレード1~5の順に、軽度、中等度、高度、生命を脅かす重症度、死亡となります。グレード2以下は、症状に対して治療が必要になる可能性がありますが、臨床試験は継続できる程度とされています。
 

用量制限毒性

一般に医薬品では投与量が増加すると毒性が増大しますが、患者がこれ以上耐えられなくなる際の毒性(副作用)のことを指します。
 

完全奏効、部分奏効、安定

抗がん剤の治療により、がんの大きさがどの程度小さくなったかを表す基準で、最も一般的なRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumor)のガイドラインでは、以下のように定義されています。
・完全奏効:がんが消失し、それが4週間続いた状態。
・部分奏効:がんの大きさが30%以上縮小し、それが4週間続いた状態。
・進行:がんの大きさが20%以上増加した状態。
・安定:部分奏効と進行の間の状態。