タカラバイオ株式会社は、第11回日本免疫治療学研究会学術集会(本年2月22日東京ガーデンパレスにて開催予定)にて、がん免疫細胞療法に関する研究の成果を発表します。

 

発表する演題の一覧は下記のとおりです。

 

演題名 発表日・演題番号
RetroNectin® induced T cells(RIT)の特性解析及び臨床応用 2月22日
ポスターディスカッション
演題番号11
高活性CD3sup{+}CD56sup{+}細胞を高含有するT細胞の新規大量培養技術開発及びその特性解析 2月22日
ポスターディスカッション
演題番号12
高純度NK細胞培養技術の確立と抗体医薬品併用治療の検討 2月22日
ポスターディスカッション
演題番号13

 

タカラバイオ株式会社は、京都府立医科大学と共同で、当社が培養方法を開発したレトロネクチン®誘導ナイーブT細胞および、レトロネクチン®を用いた高純度NK(ナチュラルキラー)細胞に関する臨床研究を実施して参りました。臨床研究により安全性を確認した後、当社の技術支援のもとで、国内医療機関においてそれらの技術を用いたがん免疫細胞療法が提供されています。

 

日本政府は成長戦略の1つとして、再生医療等の早期実用化を目指しており、昨年11月に国会で成立した再生医療等安全性確保法により、医療機関が患者から採取した細胞の加工や培養を外部の企業に委託できるようになりました。当社は、今後とも、抗腫瘍効果がより高い新たな免疫細胞療法を開発する為の臨床開発を進めるとともに、現在滋賀県草津市に建設中の新GMP製造施設を中核施設として、がん細胞免疫療法の技術支援サービスの拡充に努めます。

 

また、当社は、がん細胞免疫療法で投与されるリンパ球の培養に用いられる、臨床グレードのレトロネクチン®および、培地添加剤である抗CD3モノクローナル抗体の製造販売も行っており、当該分野において新製品の開発・販売に注力することにより、細胞医療事業の売上拡大を目指します。 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

がん免疫細胞療法

がん免疫細胞療法は、患者自身のリンパ球を、自身のがん細胞を攻撃できるように体外で活性化し、その細胞数を増やしてから、患者の体内に再び戻し、がん細胞を破壊に導くというものです。外科手術、放射線治療、化学療法などと比較して、一般的に副作用が少ないと言われ、それらの治療方法や温熱治療等と併用されています。

 

レトロネクチン®

レトロネクチン®は、当社が開発したヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。さらに、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見し、レトロネクチン®の臨床応用を進めています。

 

ナイーブT細胞

特異的な抗原により刺激を受け活性化されたことがない未分化T細胞で、抗原の提示を受けることにより、細胞傷害性T細胞やヘルパーT細胞などに分化する能力を有しているとされています。生体内での生存能力が高く、抗原認識能も高いため、高い抗腫瘍効果が期待されます。

 

ナチュラルキラー(NK)細胞

NK細胞は、末梢血中に10~20%の割合で存在するリンパ球の一種で、ウイルスによる感染やがん細胞に対する初期防御機構としての働きを担っています。細胞障害活性が高く、がん細胞に対する抗腫瘍効果が期待できるため、がん免疫細胞療法への応用が進められています。

 

レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法

当社が開発したレトロネクチン®拡大培養法により得られたナイーブT細胞を多く含む細胞を投与する治療法です。レトロネクチン®拡大培養法は、ヒトリンパ球の拡大培養の際に、インターロイキン2および抗CD3モノクローナル抗体に加え、ヒトフィブロネクチンを改良した組換えタンパク質である、レトロネクチン®を併用するものです。当社は、レトロネクチン®拡大培養法によって効率よくリンパ球を増殖させることができ、さらに得られた細胞集団に、ナイーブT細胞が多く含まれていることを確認しています。

 

抗CD3モノクローナル抗体

CD3はヒトリンパ球上に存在する表面抗原分子の一つで、このCD3分子を特異的に認識する均一分子の抗体。抗CD3モノクローナル抗体がTリンパ球上のCD3分子に結合すると、T細胞が活性化されると考えられています。