タカラバイオ株式会社は、メラノーマや皮膚の扁平上皮癌などの固形がんを対象に、腫瘍溶解性ウイルスHF10(開発コード:TBI-1401(HF10))の第Ⅰ相臨床試験を日本国内で実施しておりますが、8月3日に第1例目の被験者へHF10の投与が行われました。
 
腫瘍溶解性ウイルスHF10は、単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株で、正常細胞ではほとんど増殖しませんが、がん細胞に感染すると増殖し、がん細胞を死滅させる抗がん作用を有します。当社は、国立がん研究センター中央病院にて、HF10を反復投与した際の安全性などの評価を行う第Ⅰ相臨床試験を進めています。症例数は6例で、平成28年3月期に終了する予定です。
 
当社は、米国にてHF10のメラノーマを対象とした第Ⅱ相臨床試験も進めており、HF10の平成30年度の商業化を目標に、引き続き臨床開発を推進してまいります。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic virus)

正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルスのことです。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

 

HF10

当社は、平成22年11月にHF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得しました。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗がん作用を示します。日本では再生医療等製品として開発を進めています。

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が治療薬として有効です。

 

メラノーマ

悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、悪性黒色腫とも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、メラノーマはこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています