独立行政法人科学技術振興機構が公募した平成25年度 第2回「研究成果最適展開支援プログラム産学協同促進ステージ ハイリスク挑戦タイプ」に、当社と独立行政法人国立精神・神経医療研究センターが共同応募した課題「アデノ随伴ウイルス(AAV)中空粒子を用いる臓器特異的ドラッグデリバリーシステムの臨床応用に向けた開発」が新規課題として採択され、この度科学技術振興機構との開発委託契約を締結しました。

 

アデノ随伴ウイルス中空粒子を用いたドラッグデリバリーシステムは、アデノ随伴ウイルスに病原性がないことによる高い安全性と、ウイルス型による臓器への感染性の違い、ウイルスの取扱いの容易さ、粒子に包埋された薬剤の高い安定性といった利点があり、核酸医薬などの薬剤を、目標とする臓器に安定的に送達・導入可能なシステムが構築できると期待されています。

 

本採択課題の概要は以下の通りです。

 

委託元 独立行政法人科学技術振興機構
実施内容 アデノ随伴ウイルス中空粒子を用いた臓器特異的な薬剤のドラッグデリバリーシステムの臨床応用を目的とした開発を行う。
① アデノ随伴ウイルス中空粒子の安定した大量製造法及びGMP製造法の確立
② アデノ随伴ウイルス中空粒子への薬剤導入効率試験系の構築
③ 動物モデルを用いた本手法の検証
委託期間 平成25年12月1日から平成28年11月30日
委託費 総額 5,998万円(税込)

 

アデノ随伴ウイルスベクターは、2012年に欧米で初めて認可された遺伝子治療薬に利用されたため遺伝子治療分野において注目を集めており、当社も同ウイルスベクター関連の研究用試薬の開発・販売、ベクターの製造受託を行っています。

 

本事業において当社は、これまで蓄積してきたアデノ随伴ウイルスを含むウイルスベクターの製造に関するノウハウを活かし、アデノ随伴ウイルス中空粒子の安定した大量製造法及び、中空粒子のGMP製造法開発の部分を担当することにより、筋ジストロフィーやがんなど種々の遺伝病に応用可能な、新規の臓器特異的ドラッグデリバリーシステムの開発に貢献していきます。

 

(ご参考)科学技術振興機構ホームページ
平成25年度第2回募集新規課題 一覧
http://www.jst.go.jp/pr/info/info995/besshi1.html

 

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

アデノ随伴ウイルス(AAV)

アデノ随伴ウイルスは、ヒトや動物に感染する病原性をもたないウイルスであり、遺伝子治療用ベクターとして低免疫原性、低毒性、長期発現性という長所を併せ持つことから、全世界で遺伝子治療臨床開発が進められています。アデノ随伴ウイルスには多くの血清型が存在し、臓器特異的に感染することが知られています。

 

アデノ随伴ウイルス中空粒子

アデノ随伴ウイルスのゲノムを保持しない、アデノ随伴ウイルスの外殻タンパク質です。内部に薬剤、核酸、抗体、タンパク質などを包埋することで、目的物質を目標とする臓器に送達・導入することができます。

 

ドラックデリバリーシステム

ドラックデリバリーシステムとは、病気の治療等に必要な薬物を、効果を発揮させるために必要な量を必要な時に体内の目的の部位に送り届ける手法のことです。

 

GMP製造

GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略で、医薬品を製造する際に遵守すべき「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則」を指します。GMPは、安全で品質が担保された医薬品を供給するため、医薬品の製造時の管理、遵守事項を各国の規制当局が定めたものです。

 

アデノ随伴ウイルスベクター

アデノ随伴ウイルスベクターは、遺伝子導入用にアデノ随伴ウイルスを人工的に改変して作製したベクターです。遺伝子導入できる大きさが4,500塩基程度と小さいですが、病原性がないウイルス由来のものであり安全性が高いことや、物理化学的に安定で、精製操作が比較的簡便であることから、遺伝子治療や動物個体への遺伝子導入用ベクターとして注目されています。また、宿主域が広く、神経などの非分裂細胞にも遺伝子導入できるという利点があります。