タカラバイオ株式会社は、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会2017(本年7月27日~29日開催、神戸コンベンションセンター、他)において、腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内第I相臨床試験の結果を発表しますので、お知らせいたします。

【発表概要】

学会名

第15回日本臨床腫瘍学会学術集会2017

場所

神戸国際展示場3号館1階展示室

発表日時

平成29年7月27日(木)18:00~19:00

演題

Phase I Trial of Oncolytic Immunotherapy HF10 in Patients with Refractory Superficial Cancers
(腫瘍溶解性ウイルスHF10の難治性表在性病変を有する癌患者に対する第I相臨床試験)

発表要旨

腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内第Ⅰ相臨床試験結果

 

【安全性について】

  • HF10に起因する有害事象は6例中3例に認められたが、いずれもグレード1であった。
    用量制限毒性は認められなかった。
     

【有効性について】

  • 有効性評価可能例3例のうち2例は安定、1例は進行であった。
  • 先に実施された米国での第I相臨床試験と比較し、日本人と米国人においてHF10の安全性プロファイルに顕著な差異はないと考えられた。

 

 当社は腫瘍溶解性ウイルスHF10の臨床開発を国内外で実施しており、国内においては、悪性黒色腫を対象にした第II相臨床試験、膵がんを対象にした第I相臨床試験が進行中です。また、米国においては、悪性黒色腫を対象にした第II相臨床試験が終了し、次相を計画中です。当社は、腫瘍溶解性ウイルスHF10について、2018年度の承認取得を目標に、臨床開発を推進してまいります。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

 

HF10
HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。当社は、平成28年12月に大塚製薬株式会社とHF10に関する国内独占的ライセンス契約を締結しました。

 

悪性黒色腫
悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、メラノーマとも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。

 

副作用のグレード
副作用の重症度を示すものです。米国がん国立研究所が公表した基準では、グレード1~5の5段階に分類されています。グレード1~5の順に、軽度、中等度、高度、生命を脅かす重症度、死亡となります。グレード2以下は、症状に対して治療が必要になる可能性がありますが、臨床試験は継続できる程度とされています。