2010
2010.10.22
抗がん剤事業を株式会社エムズサイエンスより買収
タカラバイオ株式会社(社長:仲尾功一)と、株式会社エムズサイエンス(代表取締役:三田四郎)とは、エムズサイエンス社が開発を進めている抗がん剤「腫瘍溶解性ウイルスHF10」に関する事業を当社が買収することについて合意に至り、本日10月22日付で事業譲渡契約を締結しましたので、お知らせいたします。なお、当該事業譲渡の実行は、2010年11月30日を予定しています。
今回の事業買収の概要は次の通りです。
- HF10事業について
腫瘍溶解性ウイルスHF10は、単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株であり、正常細胞ではほとんど増殖しませんが、がん細胞に感染すると増殖し、がん細胞を死滅させることが動物実験などにおいて示されています。現在エムズサイエンス社は、米国において頭頸部がんを対象としたHF10の第I相臨床試験を実施中であり、すでに3例の患者への投与が実施されています。
また、名古屋大学医学部附属病院において、乳がん、頭頸部がんおよび膵臓がんの患者を対象としたHF10の臨床研究が実施されており、HF10の安全性と各種がんに対する有効性を示唆する結果が得られています。
当社は、HF10に関する全ての権利・契約、技術関連資産、臨床および非臨床試験に関する資料等をエムズサイエンス社から譲り受け、事業化を進めていきます。米国で行われている第I相臨床試験についても、当社が引き継ぎ実施していきます。 - HF10事業買収の意義・理由
当社は、高効率遺伝子導入法であるレトロネクチン®法を基盤技術として、遺伝子治療の臨床開発に取り組んでいます。レトロネクチン®法は、すでに欧米を中心とする医療機関において50を超える遺伝子治療の臨床試験で採用されており、遺伝子治療のスタンダード技術となりつつあります。
また、当社自身も遺伝子治療の事業化に積極的に取り組んでおり、(1)HSV-TK遺伝子治療の第I相臨床試験(再発白血病を対象としたドナーリンパ球輸注療法)や臨床研究(ハプロタイプ一致造血幹細胞移植後のドナーリンパ球輸注療法)、(2)食道がんを対象としたTCR遺伝子治療の臨床研究を進めています。さらに、(3)HIVを対象としたMazF遺伝子治療の米国における臨床試験を2011年度に開始する予定です。
一方、腫瘍溶解性ウイルスであるHF10は、ウイルスを利用した新しいタイプの抗がん剤であり、広義の遺伝子治療に分類されます。HF10の開発・製造には、ウイルスベクターの解析・製造技術といった当社が保有する遺伝子治療関連の技術・ノウハウを広く活用することができます。すでに米国において第T相臨床試験が行われているHF10プロジェクトを獲得することによって、当社は遺伝子治療関連事業の開発パイプラインを拡充し、開発リスクの分散や開発成功時の収益の拡大を図ることができるものと考えています。
今回の事業買収による平成23年3月期業績への影響は軽微であり、通期業績予想の変更はいたしません。また、今回の事業買収に要する資金は、すべて当社の手元資金より支出いたしますので、新株発行等による資金調達は行いません。
当社は、新たに加わる抗がん剤HF10を含め、引き続き遺伝子医療分野の各プロジェクトの臨床開発を積極的に推進し、遺伝子治療の商業化を目指していきます。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 バイオインダストリー部
Tel 077-543-7212
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【エムズサイエンス社の概要】
| 会社名 | : | 株式会社エムズサイエンス |
| 設立 | : | 2000年 |
| 代表取締役 | : | 三田 四郎 |
| 資本金 | : | 10百万円 |
| 住所 | : | 神戸市中央区港島南町5丁目5番2号 神戸国際ビジネスセンタービル |
| 事業概要 | : | 医薬品の研究開発 |
| ホームページ | : | http://www.m-sci.com/ |
【語句説明】
腫瘍溶解性ウイルス腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、がんに対する宿主の免疫を活性化することで、がん全体を縮小することが期待されます。
単純ヘルペスウイルス1型
単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が有効です。
HF10の臨床研究
名古屋大学医学部附属病院では、再発性乳がん、再発頭頸部がんおよび切除不能膵臓がんを対象とした3つの臨床研究が実施されています。論文等で報告されている研究結果の概要は次の通りです。
(1)いずれの臨床研究においても、HF10は腫瘍内に局所投与されました。再発性乳がんを対象とした研究では、6例にHF10が投与され、投与部位のがん細胞のうち30〜100%が死滅しました。再発頭頸部がんを対象とした研究では、3例にHF10が投与され、HF10が増殖して腫瘍内に広がり、がん細胞の溶解が見られました。
(2)頭頸部がんを対象とした臨床研究において軽度の発熱が見られた以外に、HF10による副作用は報告されていません。
レトロネクチン®法
レトロネクチン®法は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質であるレトロネクチン®を用いた高効率遺伝子導入法です。当社はレトロネクチン®に関する日本を含む世界各国における物質特許を保有しています。










