ニュースリリース

2009

2009.03.03

ヒトiPS細胞作製用試薬を新発売

タカラバイオ株式会社(社長:加藤 郁之進)は、ヒトiPS細胞の効率的な作製に有用な研究用試薬「Human iPS Cell Generation™ Vector Set」を3月30日より発売します。


ヒトiPS細胞を効率的に作製するためには、複数の遺伝子を効率よくヒト皮膚繊維芽細胞等の細胞に導入する必要があり、さらに細胞の中でこれらの遺伝子が効率よく発現されることが重要です。しかし現状ではヒトiPS細胞の誘導効率は極めて低く、昨年1月に京都大学から発表された論文(nature biotechnology)によれば、c-MYCを除く複数遺伝子(OCT3/4SOX2KLF4)を50万個の細胞に遺伝子導入した場合、0〜5個のiPS細胞が誘導されたという報告があります。つまり0〜0.001%というiPS細胞誘導効率で、iPS細胞の研究を行う上での障害の一つとなっています。
当社が開発した組換えタンパク質であるレトロネクチン®は、高効率に遺伝子を細胞に導入する目的で世界の遺伝子治療臨床研究で使用されています。このレトロネクチン法を用いることにより、従来法であるポリブレン法と比べ、10〜30倍高効率にヒトiPS細胞を作製できることを見出しました。この成果を、東京で開催される第8回日本再生医療学会総会にて3月5日に発表します。


当社は、この成果を研究者の方々に利用していただくため、iPS細胞を作製するための遺伝子((1)OCT3/4 及びSOX2 、(2)KLF4、(3)LIN28及びNANOG)を予め組み込んだレトロウイルスベクタープラスミドのセット((1)、(2)、(3)のそれぞれの遺伝子を組み込んだプラスミド)を販売します。これらのプラスミドは、高効率・高発現のレトロウイルスベクタープラスミドpDON-5 DNAを使用しており、本セットを使って作製したレトロウイルスベクターと、別途販売しているレトロネクチン®を使用して目的細胞に遺伝子導入することで、高効率にiPS細胞が作製できることになります。
また、同時に本セットを使ったレトロウイルスベクター作製の受託サービスも3月16日に開始します。


今回の新製品を始め、当社ではiPS細胞作製に有用な製品・技術を多数保有していますので、今後もiPS細胞関連の研究をサポートして参ります。


【製品概要】

製品名Human iPS Cell Generation™ Vector Set
内容(1)OCT3/4 及びSOX2、(2)KLF4、(3)LIN28及びNANOGのそれぞれの遺伝子を含むレトロウイルスベクタープラスミド
製品コード3670
容量各プラスミド 5μg(全3種類)
価格157,500円(税込)
Human iPS Cell Generation™ Vector Set

【受託概要】

目的細胞にiPS細胞作製遺伝子を導入するためのレトロウイルスベクター作製を受託として承ります。レトロウイルスベクターの作製にHuman iPS Cell Generation™ Vector Setを使用しますので、細胞への安定的かつ高効率での遺伝子導入と細胞の中での当該遺伝子の高発現が可能で、効率的にiPS細胞が作製できます。価格は別途お問い合わせください。


製品の詳細やご購入については、当社営業部企画担当(TEL:077-543-7231)にお問い合わせください。




この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 バイオインダストリー部
       Tel 077-543-7212

当資料取り扱い上の注意点

資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。



<参考資料>

【語句説明】

iPS細胞
体細胞に、再プログラム化に必要な数種類の遺伝子を導入し誘導される分化多能性を獲得した細胞のことです。2006年に京都大学山中伸弥教授らのグループにより、この現象が発見され人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells:iPS細胞)と名付けられました。iPS細胞は、ES(Embryonic Stem)細胞とほぼ同等の分化多能性を示すことから、薬剤開発、種々の疾患の病態解明や再生医療への応用が期待されています。

iPS細胞を作製するための遺伝子
ヒトiPS細胞を作製するための遺伝子の組み合わせとして、山中教授らが示した4遺伝子(OCT3/4SOX2KLF4c-MYC)及びc-MYCを除いた3遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4)が知られています。一方、アメリカのウイスコンシン大学のグループは、OCT3/4SOX2に加えてLIN28NANOGの組み合わせでiPS細胞を作製する手法を発表しています。当社では、これら遺伝子のうち、腫瘍化の問題が指摘されているc-MYCを除いた5遺伝子(OCT3/4SOX2KLF4LIN28NANOG)の組み合わせでiPS細胞への誘導を行い、効率良く作製できることを確認しています。

レトロネクチン®
レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。当社はレトロネクチン®に関する日本を含む世界各国における物質特許を保有しています。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、いまやレトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。そして、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見しています。

ポリブレン法
従来、一般的に用いられてきた、レトロウイルスベクターを介した遺伝子導入を促進するための方法です。ポリブレンと呼ばれる高分子物質は正電荷を帯びており、負電荷を帯びている細胞とレトロウイルスベクターの双方に吸着して、本来は反発しあう細胞とレトロウイルスベクターの接触を仲介します。このような機構で遺伝子導入の確率を向上させる一方、細胞に対して毒性を示すという問題も知られています。

プラスミド
環状の二本鎖DNAで、大腸菌、酵母や動物細胞内で、複製・維持されます。大腸菌などの細胞内で目的タンパク質を大量に発現させることのできる遺伝子組換え技術等に利用されます。

レトロウイルスベクター
レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとするウイルスの一種で、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。遺伝子治療用ベクターとして、レトロウイルスの一種であるマウス白血病ウイルス(MoMLV: Moloney murine leukemia virus)を特別な細胞の中でのみ増殖できるように改変し、自己増殖能を奪ったものが広く用いられています。このベクターを使用すれば種々の細胞に遺伝子導入を行うことができ、安定した形質発現が期待できます。

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