2008
2008.12.1
カリフォルニア大学(UCLA)が実施する悪性黒色腫を対象とした遺伝子治療の臨床試験にレトロネクチン®をライセンス供給
タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)は、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles; UCLA)のアントニ・リバス博士(Antoni Ribas)らのグループが実施する悪性黒色腫を対象とした臨床試験に、当社が開発したレトロネクチン®をライセンス供給する契約を2008年12月1日付で締結しました。本臨床試験には22人の患者が登録される予定です。
悪性黒色腫は、皮膚の色素であるメラニンを産生する細胞であるメラノサイト、あるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性腫瘍化したもので、単に黒色腫またはメラノーマと呼ばれることもあります。皮膚がんのうちで最も恐ろしいものとされ、全世界で毎年16万人近くが悪性黒色腫の診断を受け、また約48,000人が悪性黒色腫により死亡しています。
UCLAで実施される臨床試験では、患者から採取したTリンパ球に、悪性黒色腫のがん抗原であるMART-1を特異的に認識することのできるT細胞受容体(TCR)の遺伝子を、当社が開発したレトロネクチン®を用いてレトロウイルスベクターにより高効率に導入します。このTCR遺伝子を導入したTリンパ球を体外で拡大培養後に患者に輸注すると、TCRを細胞表面に発現したTリンパ球が、がん抗原を特異的に認識し、腫瘍を攻撃します。
本臨床試験では、このTCR遺伝子を導入したリンパ球に加えて、MART-1抗原ペプチドを結合させた患者の樹状細胞を患者に輸注します。これにより、患者体内で腫瘍を攻撃するための免疫力をさらに高めることができます。
当社のレトロネクチン法のライセンスを受けて行われる遺伝子治療の臨床試験は、本臨床試験が世界で第44番目となります。体外遺伝子治療は難病治療のための必須な治療法として世界中に広まりつつあり、同時に体外遺伝子治療に必要なスタンダード技術であるレトロネクチン法がよりいっそう認知され、さらに広がっていくものと期待しています。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 バイオインダストリー部
Tel 077-543-7212
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【語句説明】
レトロネクチン®レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。当社はレトロネクチン®に関する日本を含む世界各国における物質特許を保有しています。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、いまやレトロウイルスによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。そして、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見しています。
がん抗原
がん細胞において発現している抗原タンパク質です。その一部(がん抗原ペプチド)はがん細胞の表面にMHCクラスIとともに発現していることがあります。がん抗原特異的な細胞傷害性T細胞はこのがん抗原ペプチドを認識しがん細胞を殺傷すると考えられています。
T細胞
抗体産生の調節と標的細胞の傷害の役割を担う重要な細胞で、Tリンパ球とも呼ばれます。免疫系の司令塔的な役割を担っており、末梢リンパ組織の胸腺依存領域に主に分布します。
T細胞受容体(TCR)
T細胞に発現される糖タンパク質で、T細胞が抗原を認識する受容体です。
レトロウイルスベクター
レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとする約0.1 μmのウイルスで、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。遺伝子治療用ベクターとして、レトロウイルスの一種であるマウス白血病ウイルス(MoMLV: Moloney murine leukemia virus)を特別な細胞の中でのみ増殖できるように改変し、自己増殖能を奪ったものが広く用いられています。このベクターを使用すれば種々の細胞に遺伝子導入を行うことができ、安定した形質発現が期待できます。
樹状細胞
特異的な免疫応答を誘導する抗原とMHC分子の複合体を細胞表面上に提示して、T細胞を抗原特異的に活性化することができる細胞です。細胞外から抗原ペプチドを加えることによってもこの複合体を提示することができます。樹状細胞はもっとも強力な抗原提示細胞と考えられています。










