2008
2008.6.3
京都府立医科大学にタカラバイオの寄附講座、「がん免疫細胞制御学講座」を設置し、最先端のがん細胞免疫療法の開発を目指します
タカラバイオ株式会社(社長:加藤 郁之進)は、がん細胞免疫療法の臨床開発を推進するため、京都府公立大学法人京都府立医科大学(学長:山岸 久一)に、2008年5月1日付けで寄附講座「がん免疫細胞制御学講座」を開設しました。新講座は、現在京都府立医科大学 消化器内科学講座を担当されている吉川敏一教授と古倉聡准教授がそれぞれ兼任されます。
京都府立医科大学消化器内科学では、近いうちに京都市内の関連クリニックで新たにがん細胞免疫療法を開始する予定です。今後、寄附講座とタカラバイオとの共同研究で、新しいがん細胞免疫療法を開発し、関連クリニックでの臨床展開を考えています。
がん細胞免疫療法は、がん患者自身のリンパ球を体外でがん細胞を攻撃できるように活性化し、その活性化された細胞数を増加(拡大培養)させてから、患者の体内に再び輸注し、体内のがん細胞を破壊に導くという治療法です。この治療法は、化学療法で引き起こされるような体への障害がほとんどなく、すでに米国国立がん研究所(NCI)では遺伝子治療と組み合わせたがん細胞免疫療法を用いて、がんのなかでも最も恐れられている悪性黒色腫の治療にも成功しています。
当社が開発した新しい方法は、従来から使用されているIL-2及び抗CD3モノクローナル抗体に加えて、組換えヒトフィブロネクチンであるレトロネクチン®を用いてリンパ球を体外で活性化・増殖するもので、これによってリンパ球数が著しく増加するだけでなく、リンパ球の分化過程の初期段階に相当するナイーブT細胞の存在比率が増加します。この方法によって得られたリンパ球は、レトロネクチン®を使用していない場合に比べると、体内で容易に死滅せず持続的に働くことが示されており、がん細胞に対する攻撃能力が高まると考えられます。この方法は米国のNCI、中国の天津医科大学、中国医学科学院がん病院、日本の三重大学医学部附属病院などで、すでに採用されています。
京都府立医科大学は、従来から、がん細胞免疫療法や温熱療法の臨床応用に向けた研究開発や取り組みを進めています。現在臨床的に実施しているがん細胞免疫療法としては、活性化リンパ球療法(患者から採血した全血から分離したリンパ球を前述のIL-2及び抗CD3モノクローナル抗体を用いてフラスコ内で刺激活性化した後、体内に戻す方法)と腫瘍浸潤リンパ球療法(腹水、胸水、がん組織内に浸潤してきたリンパ球をフラスコ内で培養し、活性化して体内に戻す方法)などを行なっておりますが、臨床的効果に限界があることもわかっています。京都府立医科大学では、従来から温熱療法と化学療法との併用治療を実施しておりますが、この温熱療法ががん免疫を増強することが最近わかってきました。そこで現在、温熱免疫療法という新しい治療概念の基礎的検討と臨床的検討を進めております。
今後、当社と京都府立医科大学とは共同で、レトロネクチン®を用いたがん細胞免疫療法や、温熱療法などを組み合わせ、より治療効果の高いがん細胞免疫療法の臨床開発を進めていきます。
【寄附講座の概要】
- 名称:がん免疫細胞制御学講座
- 設置期間:2008年5月1日から2011年4月30日まで
- 寄附金総額:1億5000万円(5000万円×3年)
- 体制:
教授 吉川敏一 (兼任 現 京都府立医科大学 消化器内科学 教授)
准教授 古倉 聡 (兼任 現 京都府立医科大学 消化器内科学 准教授)
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 バイオインダストリー部
Tel 077-543-7212
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【語句説明】
インターロイキン2(IL-2)リンパ球が分泌する糖蛋白質でサイトカインの一種。T細胞増殖因子ともよばれ、リンパ球を増殖させる働きがあります。
抗CD3モノクローナル抗体
CD3はヒトリンパ球上に存在する表面抗原分子の一つで、抗CD3モノクローナル抗体は、このCD3分子を特異的に認識する均一分子の抗体です。抗CD3モノクローナル抗体がリンパ球上のCD3分子に結合すると、T細胞が活性化されると考えられています。
レトロネクチン®
レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。当社はレトロネクチン®に関する日本を含む世界各国における物質特許を保有しています。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、いまやレトロウイルスによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。そして、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見しています。
ナイーブT細胞
特異的な抗原により刺激を受け活性化されたことがない未分化T細胞で、血液中を循環し、2次リンパ組織において抗原提示細胞により抗原の提示を受け、細胞傷害性T細胞やヘルパーT細胞などに分化する能力を有しているとされています。










