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遺伝子医療分野

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遺伝子医療事業では、当社が遺伝子工学研究事業で培ったテクノロジーを利用して、遺伝子医療に必須となる中核技術の開発を行い、その商業化を進めています。開発した中核技術のライセンスアウトに加え、がんやエイズなどを対象にした遺伝子治療や細胞医療の臨床開発を進めています。
遺伝子治療
遺伝子治療とは、生まれつき欠いている遺伝子や、病気を治すために役立つ遺伝子、あるいはこれらの遺伝子を組み込んだ細胞を、患者の体に投与することで疾患を治療する方法です。遺伝子治療は、体外遺伝子治療と体内遺伝子治療に大別されます。体外遺伝子治療とは、ヒトの細胞を取り出して、体外でその細胞に目的の遺伝子を導入し、その細胞を患者に投与する方法です。一方の体内遺伝子治療は、生体に治療用遺伝子を直接投与する方法です。

レトロネクチン(R)
レトロネクチン®

遺伝子医療分野の中核技術

 遺伝子医療事業における当社の中核技術の一つは、米国インディアナ大学と共同開発したレトロネクチン®を用いた高効率遺伝子導入法(レトロネクチン法)であり、当社はその全世界における独占的実施権を保有しています。レトロネクチン法は、造血幹細胞やリンパ球などの血球系細胞への高効率遺伝子導入を可能とするものであり、体外遺伝子治療における遺伝子導入法のスタンダードとなっています。
 もう一つの中核技術として、レトロネクチン® を用いたリンパ球の拡大培養法(レトロネクチン拡大培養法)があります。リンパ球の拡大培養(リンパ球を増殖させる培養)は、遺伝子治療や細胞医療に用いられています。レトロネクチン拡大培養法とは、ヒトリンパ球の拡大培養の際に、インターロイキン2及び抗CD3モノクローナル抗体に加え、レトロネクチン®を併用するもので、この結果、生体内での生存能力が高く、抗原認識能も高いナイーブT細胞を多く含む細胞集団が大量に得られます。

レトロネクチン法のライセンスアウト

 当社のレトロネクチン法は、欧米を中心とした医療機関での遺伝子治療臨床研究や、民間企業が行っている臨床試験に採用されています。レトロネクチン法は、60を超える遺伝子治療の臨床研究で採用され、さらに4つの海外の民間企業に対してライセンスアウトを行っています。当社は、今後も積極的に全世界にライセンスアウトを行っていく計画です。


遺伝子治療に用いられるレトロウイルスベクター
遺伝子治療に用いられる
レトロウイルスベクター

細胞・遺伝子治療センター
細胞・遺伝子治療センター

遺伝子治療

 当社は、以下の遺伝子治療の臨床開発を推進しています。

1.HSV-TK 遺伝子治療

 レトロネクチン法のライセンスアウト先であるモルメド社(イタリア)が、高リスク急性白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療の第V相臨床試験を欧州において行っていますが、当社はその治療技術をほぼアジア全域で、独占的に実施する権利を獲得しています。

 1)ドナーリンパ球輸注療法(治験)

 当社は、国立がん研究センター中央病院にて、造血幹細胞移植後の再発白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療(ドナーリンパ球輸注療法)の治験を実施しています。これは国内で初めての体外遺伝子治療の治験であり、すでに被験者への遺伝子導入細胞の投与が行われています。
 ドナーリンパ球輸注療法は、各種白血病の移植後再発に対する有効性が明らかになっていますが、副作用として生じる移植片対宿主病(GVHD)が重大な問題です。ドナーリンパ球にHSV-TK遺伝子を導入しておくことで、GVHDが発症した時にガンシクロビルを投与することにより、GVHDの原因であるドナーリンパ球を死滅させることができます。

 2)ハプロadd-back(臨床研究)

 国立がん研究センター中央病院は、当社の協力のもと、HSV-TK遺伝子治療(ハプロaddback)の臨床研究を実施しており、2011年2月には第二例目の被験者への遺伝子導入細胞の投与が行われました。
 HSV-TK遺伝子治療(ハプロadd-back)は、高リスク造血器悪性腫瘍患者を対象として、ハプロタイプ一致ドナー(HLA一部不一致ドナー)からの造血幹細胞移植後に、HSV-TK遺伝子を導入したドナーリンパ球を輸注する治療法で、モルメド社が同様の治療法の第V相臨床試験を欧州において実施中です。

2.がん治療薬HF10

 当社は、2010年11月、HF10事業を株式会社エムズサイエンスより取得しました。当社は現在、頭頸部がん等の固形がんを対象としたがん治療薬HF10の第I相臨床試験を米国において実施しています。HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。
 名古屋大学医学部附属病院で実施された乳がん・頭頸部がん・膵がんを対象とした臨床研究では、HF10の安全性と良好な抗腫瘍効果が報告されています。

3.TCR 遺伝子治療

 三重大学医学部附属病院は、当社の協力のもと、食道がんを対象としたTCR(T細胞受容体)遺伝子治療の臨床研究を進めており、2011年6月に第三例目の被験者への治療が行われました。TCR遺伝子治療は、がん抗原を認識できるTCR遺伝子を導入した自己リンパ球を患者に戻し、このリンパ球ががん細胞を特異的に認識して攻撃し、がん細胞を消滅させるというものです。TCR遺伝子治療は、米国国立がん研究所でも悪性黒色腫などを対象に、当社のレトロネクチン法を用いて臨床研究が進められている有望な治療法です。
 また当社は、次世代のレトロウイルスベクターを用いたTCR遺伝子治療技術の開発も推進しており、三重大学医学部附属病院は、当社の協力のもと、臨床研究の準備を進めています。

4.MazF遺伝子治療

 当社は、RNA分解酵素MazF遺伝子を用いたエイズ遺伝子治療の研究開発を進めています。エイズは、HIV(エイズウイルス)が免疫細胞の一種であるT細胞に感染し、その細胞内で増殖することで、T細胞並びに体全体の免疫機能の不全が起こる疾患です。MazF遺伝子治療では、HIVが感染した際にMazFが発現する仕組みを持たせた遺伝子導入ベクターを用いて、体外において患者由来のT細胞に遺伝子導入します。患者に戻されたMazF遺伝子導入T細胞は、HIVが感染してもMazFによってウイルスの増殖が阻止されるため、その機能が保持され、HIV感染症の治療につながることが期待されます。
 当社は、ペンシルベニア大学と共同で、米国においてHIV感染症を対象としたMazF遺伝子治療の臨床試験を行うための準備を進めています。現在、2012年3月期中の臨床試験開始を目標に、同大学、鹿児島大学及び医薬基盤研究所と共同で、臨床試験実施のための非臨床試験を進めています。

細胞医療
細胞医療とは、生きた細胞を患者に投与することにより病気を治療することです。輸血や骨髄移植も広義には細胞医療ですが、狭義の細胞医療では細胞の分離、保存、培養による増殖・加工といった工程が含まれるものを指します。

細胞調製室
細胞調製室

安全キャビネット内での作業
安全キャビネット内での作業

細胞医療

外科療法、化学療法、放射線療法に続く第4のがん治療法といわれ、副作用の非常に少ないがん免疫細胞療法が広まり始めています。当社は、レトロネクチン®拡大培養法を用いたがん免疫細胞療法を「レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法」と名付け、本治療法の臨床開発や、がん免疫細胞療法に関する技術支援事業を展開しています。

1.レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法

 京都府立医科大学は、当社の協力のもと、消化器がん及び肺がんを対象とする、レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法の臨床研究を実施しました。この臨床研究は2010年4月に終了しており、同療法の安全性を示す結果が得られています。京都府立医科大学は、レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法の有効性を確認するために、引き続き臨床研究を実施しています。また、三重大学医学部附属病院は、当社の協力のもと、難治性がんを対象とする、レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法の臨床研究を行っています。

2.がん免疫細胞療法に関する支援事業

 当社は、がん免疫細胞療法に関する支援事業として、医療機関に対する細胞加工に関する技術支援サービスや、がん免疫細胞療法用の細胞培養用培地・バッグの販売などを行っています。

 1)細胞加工技術支援サービス

 当社は、医療法人社団医聖会の百万遍クリニック(京都市)に対して、レトロネクチン®誘導Tリンパ球療法を行うために必要な細胞加工に関する技術支援サービスを行っています。また、2011年4月より武田病院グループのたけだ診療所(京都市)に、2011年6月より藍野病院(茨木市)に対しても、細胞加工技術支援サービスの提供を行っています。
 当社は、今後もがん免疫細胞療法において有用となる細胞加工技術を開発し商業化を進めていきます。

 2)がん免疫細胞療法用の細胞培養用培地・バッグの販売

当社は、がん免疫細胞療法に用いられる細胞培養用培地・バッグの販売を行っています。特に、今後の市場拡大が期待される中国の市場開拓に努めており、順調に売上を伸ばしています。

バイオ医薬品の臨床開発支援

 当社は、遺伝子治療用ベクターをGoodManufacturing Practice(GMP)対応で製造する設備・体制を確立しています。当社は、自社の遺伝子治療プロジェクトで使用する治験用ベクターの製造を行うと同時に、大学等の臨床研究に用いられるベクターの製造受託サービスを行っています。また、2011年5月より英国ビトロロジー社と提携し、バイオ医薬品の安全性試験サービスも国内で提供しています。

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