タカラバイオ株式会社は、大塚製薬株式会社(以下、大塚製薬)とNY-ESO-1・siTCR~{TM}遺伝子治療薬(開発コード番号:TBI-1301、TBI-1301-A)およびCD19・CAR遺伝子治療薬(開発コード番号:TBI-1501)の、日本国内における共同開発・独占販売に関する契約を、2018年4月9日付で締結しました。

 

 本契約に基づき、今後、両社は協力して日本国内における両治療薬の早期の製造販売承認に向けて開発を進めます。具体的には、当社は、両治療薬の製法検討、試験製剤の製造、品質管理を行い、大塚製薬は、両治療薬の治験、その他の臨床試験、製造販売承認申請・取得、安全性情報の収集を行います。製造販売承認取得後は、当社は国内で両治療薬の製造、大塚製薬が販売をそれぞれ独占的に担います。また、本契約の適応は、全適応症です。アジア地域9か国については、大塚製薬が優先交渉権を保持します。

 

 本契約締結に伴い、当社は大塚製薬より契約一時金および開発の進捗に応じたマイルストーン達成金を受領します。上市後は、大塚製薬に両治療薬を有償で供給します。また、NY-ESO-1・siTCR~{TM}遺伝子治療薬については、売上高に応じたランニングロイヤリティーとともに、売上高目標達成の際にはマイルストーン達成金を受領します。上記の契約一時金およびマイルストーン達成金は合計で最大約63億円となります。

 

 当社の取締役遺伝子医療事業部門本部長の木村正伸は「臨床開発・薬事申請・医薬販売の経験が豊富な大塚製薬と提携することにより、両治療薬の承認取得・上市に向けて確度が上がると共に、両治療薬のバリューの最大化が期待できると考えています。特にNY-ESO-1・siTCR~{TM}遺伝子治療薬については、本年3月27日に厚生労働省により『先駆け審査指定制度』の対象品目の指定を受けたことが追い風となり、一層効率よく開発が進められるものと確信しています」と述べています。

 

 大塚製薬の取締役研究部門担当 周藤俊樹氏は「当社は、世界の人々の健康に貢献するため、独創的な発想や技術をもって革新的な製品開発の挑戦を続けています。最先端のバイオテクノロジー技術、細胞治療製品製造施設を有するタカラバイオとの共同開発提携を行うのもその一環で、2016年12月には、同社の腫瘍溶解性ウイルスHF10の日本国内における開発および独占販売契約を締結しました。今後も、遺伝子・細胞再生医療も含めたバイオロジクス分野での研究開発を推進し、未充足な医療ニーズに取り組んでまいります」と述べています。

 

 なお、当社2019年3月期通期業績予想につきましては、2018年5月11日に予定しております当社決算発表時に公表する予定です。

<参考資料>

1.大塚製薬株式会社の概要

当社と大塚製薬は2016年12月に、腫瘍溶解性ウイルスHF10の日本国内における開発および販売に関する独占的なライセンス契約を締結しています。

2.語句説明

NY-ESO-1・siTCR~{TM}遺伝子治療薬

癌患者から採取したリンパ球(T細胞)に癌細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外で導入し、培養によって増殖させた後に治療薬として患者に輸注します。TCR遺伝子が導入されたリンパ球が、癌細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させる効果が期待されます。当社では、TCR遺伝子を導入するにあたり、独自技術であるsiTCRベクター技術を用い、内在性TCRのバックグランドを抑え、目的のTCRが効率的に発現するようにしています。siTCRベクターを利用するTCR遺伝子治療薬を特にsiTCR~{TM}遺伝子治療薬と呼んでいます。現在、日本国内においては、滑膜肉腫を対象とした第I/II相試験を実施中です。また本治療薬は2018年3月27日に厚生労働省の『先駆け審査指定制度』の対象品目に指定されています。

 

TCR(T細胞受容体)

リンパ球(T細胞)に発現する糖タンパク質で、リンパ球が癌抗原などを認識する際に作用します。

 

滑膜肉腫

滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍の1つであり、悪性度が高く、局所転移および遠隔転移を生じる予後不良の疾患です。滑膜肉腫症例ではNY-ESO-1抗原発現率が高く、NY-ESO-1抗原が比較的均一に腫瘍組織全体に発現し、また、細胞あたりの発現量が高いという特徴があります。

 

CD19・CAR遺伝子治療薬

急性リンパ芽球性白血病を含む多くのB細胞性リンパ腫の、B細胞の表面に発現しているCD19というタンパク質(抗原)を特異的に認識するCAR(キメラ抗原受容体)の遺伝子を、患者由来のリンパ球に導入し、再び輸注することにより癌治療を行います。現在、日本国内においては、成人の急性リンパ芽球性白血病を対象とした第I/II相試験を実施中です。

 

急性リンパ芽球性白血病

造血幹細胞からリンパ球に成熟する段階で異常がおこり、本来リンパ球になる細胞が癌化し急速に増える白血病の一種です。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970