タカラバイオ株式会社は、ユタ大学ハンツマン癌研究所(米国ユタ州:以下、ハンツマン癌研究所)が実施する悪性黒色腫を対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10と抗がん剤ニボルマブの併用による術前免疫療法の医師主導治験に対し、当社が開発中のHF10を治験薬として供給する契約を2017年12月19日付で締結しましたのでお知らせします。
 
 当社はHF10の臨床開発を国内外で推進しておりますが、これまで、米国においては、切除不能な悪性黒色腫を対象とした抗がん剤イピリムマブとの併用第II相試験で安全性・効果に関し、良好な結果を得ています。今般、ハンツマン癌研究所が実施する本試験では、イピリムマブ同様、悪性黒色腫の治療薬として普及が進むニボルマブとHF10との併用試験が予定されており、当社は、本試験を通じHF10のより幅広い利用機会を確認することが可能と期待しております。
 
 当社は日本国内においても、悪性黒色腫および膵がん治療薬としてHF10の開発を進めており、国内におけるHF10の早期の承認を目指しております。

【試験の概要】

治験課題名

切除可能な悪性黒色腫患者(ステージIIIB、IIIC及びIVM1a)を対象としたHF10とニボルマブを併用する術前免疫療法の第II相試験

対象患者

切除可能な悪性黒色腫患者(ステージIIIB、IIIC及びIVM1a)

主要評価項目

12週間の術前免疫療法後の病理学的奏効率

目標症例数

20例

試験期間(予定)

2018年1月~2022年10月

実施施設

ユタ大学ハンツマン癌研究所

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

ニボルマブ、イピリムマブ

がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)は、がん細胞を認識して攻撃する一方、過剰な免疫応答への抑制機能をもち、抗腫瘍活性を示さない場合があります。ニボルムマブ、イピリムマブは、それぞれCTLが持つPD-1、CTLA-4という分子に結合し、この抑制機能を解除することで抗腫瘍活性を増強する医薬品(免疫チェックポイント阻害剤)です。

悪性黒色腫
悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、メラノーマとも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

HF10

HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の自然変異弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。2016年12月に当社は大塚製薬株式会社とHF10に関する国内独占的ライセンス契約を締結しました。

術前免疫療法(ネオアジュバント療法)

手術前に抗がん剤などの投与により腫瘍を縮小させてから切除手術を行う治療法のことで、ネオアジュバント療法とも呼ばれています。外科的切除手術の前に治療を行うことにより、切除後の延命効果等に寄与することが期待されます。